弾幕シューティングは得意というわけではないけれど、気が向いたときに遊んでいるジャンルのひとつだ。画面を埋め尽くす弾の美しさとギリギリをすり抜ける快感には他ジャンルにない独特の魅力がある。
ただ、このジャンルの象徴ともいえるケイブ(CAVE)作品は『ガチすぎて難しい』という印象からずっと避けていた。そんな中、Steamセールで『虫姫さま』『デススマイルズ』『怒首領蜂大復活』というケイブシューティングのバンドルを見かけた。その瞬間、避けてきた”弾幕シューティングの本場”に触れてみたいという好奇心が勝って購入に踏み切った。
とりあえずアーケード稼働順で『虫姫さま』『デススマイルズ』『怒首領蜂大復活』の順番で一通りプレイしてみた。
少女と昆虫という奇妙な組み合わせ。虫だらけなので苦手な人は厳しそうだけど、画面の大半は弾で埋まっていて敵の虫をじっくり見る余裕などほぼないだろうからたぶん問題ない。
まず驚いたのは弾速の速さとエフェクトの激しさ。視認性に慣れるまでが一苦労で、弾とエフェクトがごちゃごちゃしてて何が起きてるんだかわからない瞬間があるというのが正直な感想だった。
虫姫さまでは3つあるモードのうち、まずは弾幕が薄くて速度が速いという『オリジナルモード』からやってみて、あまりの弾速に驚かされた。次に弾幕が増えて速度が落ちるという『マニアックモード』にしたら弾幕はしっかり増えていたのに、それでも速度は思ったより速かった。
これはきっとゲームセンター時代に筐体性能の限界で避けられなかった処理落ちで実質的にスローモーション状態になることを前提にした速度になっているのだと思う。
Steam版だったら本来は処理落ちなんてしないだろうけど、弾幕が濃いときにショットボタンを押しっぱなしにしている間は意図的であろう処理落ちが発生するようになっていた。
東方などPC発のシューティング経験ばかりだったから、こうした(疑似)処理落ちでスローモーションになるタイプを遊べたのはいい経験になった。
最高難易度でなければ弾幕はそこまで濃くないから、デススマイルズは弾幕シューティングというより演出重視のシューティングという印象。
横スクロール形式で左右への攻撃ができるという点で異色のシューティングだから、これはこれで新鮮な体験になった。頻繁に使用できるパワーアップで気持ちよくなれる時間が多いのは魅力。
ゴシックホラー風のキャラクターと世界観で背景の演出や敵の造形は凝っているし、会話パートやエンディング分岐の選択肢があったりして、シューティングゲームとは思えない物語性を感じられた。
一通りのキャラクターをプレイしてストーリーを把握したらもっと楽しめそうだ。
プレイしたことがなくたって知ってたし、言いたくなるタイトル。そんなケイブの王道シリーズ怒首領蜂(どどんぱち)の大復活。
王道シリーズの後期タイトルだけあって弾幕と演出の質が良く、これぞ弾幕シューティングといえる体験ができた。
弾幕の密度、演出な派手さなどガチな洗練さがありながら、硬派な世界観の中にメカ少女が登場するのは印象的だった。
3作を通して改めて強く感じたのは、弾幕シューティングの敷居の高さだ。
アーケード版より易しくなったノービスモードの存在で弾幕シューティング未経験の初心者にもおすすめされたりするけど、そうはいっても難しいだろうと思う。
何度もやられて覚えるしかないゲーム性なのに、強制スクロールでやられたところをスルーしてしまうから再挑戦がすぐに出来ない。それに、自機狙いの弾幕を少しずつ動かして避ける『ちょん避け』など基本的なテクニックをゲーム内で教えてくれないことから、初心者は意味がわからなくて挫折し、自分で調べるくらい熱意のあるマニアだけが残っていくのがわかる。
こうして弾幕シューティングは閉じたジャンルとなり、マニア向けに難易度が上がり続けた結果が現状の姿なんじゃないだろうか。
とはいえ、3作とも同じシューティングながらゲーム性や演出面は異なる美学を感じられる「避けることの快感」を突き詰めた完成度は流石だと思えた。
ジャンルは異なるけど、ヴァンパイア・サヴァイヴァーズのようなトップビューのシューティングが一大ジャンルとなった今、カジュアルさと爽快感を併せ持った方向性なら弾幕シューティングにはまだ可能性があるかもしれないと、そう思いたい。