個人創作サークル空想の工房(@muninmumu)の無料ノベルゲーム『黒き竜と黄昏の書[Failed]』レビュー。
・ストーリー概要
人間と竜が争い続けてる世界。
人類の敵たる黒炎竜を退治しに来た竜殺しだが不思議な力で黒炎竜の過去を見ることになり何故人間と争うのかを知っていく。すべてを知ったとき竜殺しは何を選択するのか……
・ノベルパート
分岐するような選択肢のないテキストを読み進める形式でクリアまでは2~3時間程度。無料のゲームとは思えないスチル、背景絵パターンの豊富さに雰囲気ぴったりな音楽起用、テキスト表現が吹き出しだったり本のようだったり状況によって数パターンあってなるべく飽きとストレスがこない作りになってる。
メッセージ速度調整や音量調整、スキップ機能、メッセージ隠し、ギャラリーなどノベルゲームにほしい一通りの機能とオプションはある。ただ、オプションに『オートテキストスピード』があったから自動文字送りの機能はありそうだけどやり方がわからなかった。
種族間憎悪の争い、人間の醜い描写など気分が重くなるところはあるけれど最後まで見届けたいと思わせてくれた。
・クリック探索パート
ノベルパートの合間に周囲の状況を調べたりする要素。
飛ばせるけどすぐに終わるしTIPS(世界観の補足情報)が手に入るので見るといい。主なゲームらしい要素といえばこれくらいだけども、ゲームならではの仕掛けは用意されている。
甘く切ない竜と人間の恋物語と陰鬱な醜い争いのこういうギャップがあるストーリーは心揺さぶられるものがある。
しばらく「竜殺しいる?」という雑念を持ちながら読み進めていたけど後半にそっちの深掘りもちゃんとあって無駄なものはなくなってくれた。箱庭図書館の亜人たちの話ももっと見たかったけど本筋からハズれるだろうから仕方なしか。
フランシスみたいな上位存在的なキャラクターが安易に出てきて場をコントロールするのは個人的にはあんまり好きじゃないんだけども、そんなしつこく出てきて干渉してこなかったから許容範囲。空想の工房の他作品をプレイしてないけど他でも出てるのかな?
ゲーム的な要素は一見ささやかなクリック探索パートしかないけど、周回要素や最後の選択肢の仕掛け、そしてタイトルの『書』の意味がわかるのと同じ頃に『Failed』の変化というゲームならではの要素がしっかりあったのはよかった。
最後の選択肢はたぶん追加選択肢が出るまでメニューが開けない仕様で「あれ? セーブしたいけどメニュー開かないな、固まったか?」とメニューポチポチしてたら出てきたけど、「どうせどっちも見るしね」とさっさと選んでしまったらたどり着けないところだった。
ノベルゲームに慣れてくると雑に選んで選択肢消化しそうになるけどちゃんと悩んで選ばないとなという戒めになったよ。