〇〇ライクの正体:ゲーム文化に根付いた曖昧な共通語

ゲームの紹介やレビューで『〇〇ライク』という言葉を見かけることがますます増えてきた。ローグライク、ソウルライク、メトロイドヴァニア……元となった作品名を冠したこの呼び方は、便利である一方で曖昧さや誤解も生んでいる。

なぜ『〇〇ライク』と呼びたがるのか?
ゲーム文化の一端として定着しつつある「〇〇ライク」について個人的な視点から考えてみる。

【参考記事】
なぜ「〇〇ライク」は生まれるのか? ゲームジャンル名の変遷とその文化的背景(4Gamer)

ジャンルを補足する〇〇ライク

ゲームにはある作品の影響を色濃く受けた“系譜”がある。
その代表格が『ローグライク』だ。ローグという古典的なPCゲームに触発されて生まれたトルネコの大冒険や風来のシレンは、ローグの持つ緊張感やランダム性を受け継ぎつつ、ビジュアルや操作性を洗練させた“進化形”だった。実際にトルネコやシレンをプレイしてみるとローグらしいゲーム性は随所に感じられる。まさに『ローグライク』という呼び方がしっくりくる作品たちだ。

しかし時代が進むにつれ『〇〇ライク』という言葉は少しずつ変質してきた。
最近では高難易度の3Dアクションというだけで『ソウルライク』と呼ばれるゲームが後を絶たない。それなのに元となったデモンズソウルやダークソウルとはシステムも構造もまるで違う作品だったりする。もはや“似ている”というより“なんとなくそれっぽい”という印象だけで名付けられているようにも思える。
つまり今の『〇〇ライク』は“ジャンルを補足するラベル”として使われているんだろう。
ゲームの数が爆発的に増え、ジャンルも細分化されていく中で『アクションRPG』や『探索型2D』といった言葉だけでは伝えきれないニュアンスがある。そこで登場するのが『〇〇ライク』で、元作品の名前を借りることでプレイヤーに“どんな体験が待っているか”をざっくり伝える手段として機能しているのだ。

〇〇ライクが生む期待と誤解

上述のとおり『〇〇ライク』という言葉はゲームの第一印象を伝えるうえで非常に便利だ。
新作タイトルにこのラベルが付くだけでプレイヤーは「なんとなくこういう体験ができそうだ」と予測できる。ジャンル名だけでは伝えきれないニュアンス、例えば“死にゲー感”や“探索の緊張感”を補足する役割を果たしてくれる。

でも、その便利さの裏には落とし穴もある。
『〇〇ライク』と呼ばれた瞬間、プレイヤーは無意識に“元作品の再現”や“類似体験”を期待してしまう。そして実際にプレイしてみて「思ってたのと違う」と感じると“期待とのズレ”に対して失望する。開発者が「これは〇〇ライクです」と名乗っていたならともかく、ユーザー側が「これは〇〇ライクかな」と勝手に期待して勝手に失望するのは開発者側からしたら理不尽な話だ。こうした背景もあってか、開発者自身がジャンルを言うことはあっても「これは〇〇ライクです」と名乗るケースは少ないと思う。

「〇〇ライク」は、プレイヤーと開発者の間にある“期待の橋”であり、“誤解の壁”でもある。
その言葉がもたらす影響を、僕たちプレイヤーも少しだけ意識してみる必要があるのかもしれない。

でもゲームの説明をするとき『〇〇ライク』って言いたいよね。伝わりやすいしやっぱり楽だからさ。

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