このゲームのレビューをするのは難しい。内容に触れてしまった分だけ、このゲームで味わえる体験は薄くなっていくからだ。
だからといって、せっかくプレイしたのに何も触れないのはもったいないし、何かのきっかけでストアページに辿り着いて「一体このゲームは何なんだ?」と興味を持ってしまった何処かの誰かが参考にやってくるかもしれないので段階に分けてレビューしてみようと思う。下に行くほど内容に触れて、ネタバレも増えていくという算段。
タイトル画面にあるからこれは言っていいだろう。このゲームは『牛乳を買いに行く』ゲームだ。
十数分で終わる短編ビジュアルノベルだし1リットルの牛乳より安いのだから少しでも興味があるなら買ってみたらどうだろう。1つだけ、イヤホンは推奨しておきたい。
ゲームとしては選択肢が何度もあって、一定数あるいは特定のハズレの選択肢を選んでしまったらバッドエンド、最後まで辿り着けたらトゥルーエンドとなる。
マウスホイールでログを撒き戻せることが出来て選択もやり直せるから、選択肢を間違ったと思ったらすぐにやり直すこともできる。数回やればどんな選択肢がゴールに向かうか見えてくるので難易度は高くないだろう。難易度が高いわけがない、だって牛乳を買いに行くだけなのだから。
主人公はちょっと不思議でお喋りが好きな女の子。脳内の自分と会話しながら牛乳を買いに行く物語で、プレイヤーはその脳内のキャラクターを演じて選択肢で会話する。
少女を不快にさせるような会話をしていると脳内のプレイヤーは話し相手として全然ダメだと見限られてしまいゲームオーバー。その際、ゲーム開始時に付けた名前に名指しで「全然ダメ」と言われて「次は別のやつでやってみる」と名前入力からやり直しとなる。
女の子と仲良く会話しながら牛乳を買って帰ろう。
読み進めていると「日本語の翻訳がおかしいのかな?」と思うことがあるかもしれないけど大丈夫。何も間違っていない。
不安を煽るような音楽と赤色ばっかりの描写は別にホラーがはじまることを示唆しているわけじゃない。それは女の子が見ている世界そのものだ。
独り言、成立しない会話、ループする思考、幻覚妄想など女の子が普通の状態でないことは読み進めていくうち徐々にわかってくる。しかし、プレイヤーに救う術はない。プレイヤーは脳内にいるキャラクターでしかないから。
女の子との会話と最後に登場するママのセリフからおおよその原因と状況を察することはできるけど、果たしてこの女の子が喋っていることや女の子視点のママを見て真に受けていいのかは判断に迷う。この物語をどう捉えるかは各プレイヤーに委ねられている。
この十数分のゲームで得られるものは良質な不快である。