SAEKO: Giantess Dating Sim レビュー&クリア後感想

巨大な少女に飼われるダークなアドベンチャーSAEKO: Giantess Dating Simのレビューとクリア後感想。

レビュー

※プロローグ(十数分プレイ)までの内容が含まれます

ストーリー概要

主人公: リンは目を覚ますと体が縮んだ小人になり記憶を失っていた。
(リンから見て)巨大な少女: 冴子に保護されたリンは、冴子の机の引き出しの中で他の小人たちと生活することになる。

というのが導入の話。プロローグの内容だけでも加えないと正確にこのゲームの話が出来ないので、ここからはプロローグ内で明らかになる話もしよう。
冴子には特殊な趣味(性癖)があり、実は冴子が持っている不思議な能力で小人にされて連れてこられた人たちの話となっている。
巨大な冴子に小人は逆らうことが出来ず、冴子の言うとおりにしなかったり機嫌を損ねれば呆気なく最悪の結末が訪れる。小人たちの運命を左右する管理人になったリンは生き残るため、決断をすることになる。

ゲームの特徴

基本的には会話を読み進めるテキストアドベンチャーで、一部パートで選択肢と分岐が発生するストーリーもの。
1日単位で区切りがあり、昼・夜・深夜の3パートに分かれている。

冴子が大学に行って留守にしている昼パートは新たにやってきた小人と自己紹介したり、机の引き出しの中にある物を使った小人同士の交流の時間。
そして昼パートの終わりには管理人として小人に食事を与える。誰に与えるかは小人の『魅力』と『体力』のパラメータを見て判断し、冴子が望むパラメータを維持することが必要になる。

夜パートは冴子と会話の時間。
自動で進む冴子の話に対して主に相槌を打つ選択肢を選ぶことになるのだけど、的外れな返答や冴子の機嫌を損ねるようなことを言えば『必要ない』と判断されてしまう。
さらに返答が早すぎれば「ちゃんと、最後まで私の話を聞いて」と怒られ、遅すぎれば「返事して」と怒られ、返事し過ぎると「うるさい」と怒られる。そりゃそうだよね、悪いのはこっちだよね。

無難に相槌を打っていれば何事もなく生き延びられるように思えるが、話の進め方にはよって会話の内容が変化することがあるので、時には思い切った返答をしてみるのもいい。

深夜パートは何故か冴子の携帯電話を触れる。
2008年設定なので携帯電話は当時主流だったいわゆるガラケーで、その時代に流行っていた携帯小説、ニュースサイトやゲームの雰囲気は時代を感じさせる。

サブタイトル(Giantess Dating Sim)だけ見ると『巨大女との恋愛シミュレーション』。確かにデートっぽいシーンはあるし、色んな意味でドキドキするゲームだけども、本筋としては小人たちの運命を左右できる立場になったリンにどんな決断をさせ、冴子という人物をどう理解するかって物語で、都度どう思うかはプレイヤー次第だ。

辛い決断をさせられることがあるし、残酷な描写やちょっと下品な性的表現などはあるからそういうのが苦手な人は注意が必要だけど、巨大女に飼われるシチュエーションと聞いて惹かれる人だったならきっと大丈夫だろう。

ボリューム・分岐について

1周クリアは約3時間。
ストーリーに関わる分岐については終盤だけなので、セーブを残しておけばエンディングの回収は手間じゃない。どれもプレイヤーによって好みが分かれそうな印象に残る結末で、後味の悪い部分があるのもこのゲームだからこそってところだろうか。

小人の運命を決められる管理人という立場とゲームのルールを知ったときに思った印象ほどストーリーに関わる分岐はなくて、わりと一本道なストーリー。早送りはあるものの、夜パートの会話はサクッと飛ばせないのもあって周回プレイはあんまり向いてないから細かい分岐や実績を回収したいならセーブを小分けにしといた方がよさそう。幸いセーブ枠は十分にある。

エンディング分岐について(ネタバレあり)

エンディングの分岐についての攻略メモ。
エンディングは大きく分けて3つあり、共に巨人になって世界を滅ぼそうとする虐殺エンド。冴子がリンに殺されることを望む間接的な自殺エンド。冴子がリンに飼われる贖罪エンドに分かれる。

  • エンディング分岐

【分岐: 虐殺エンド】
6日目: 昼にクララに食事を与えればルート確定。
6日目: 昼にチオに食事を与えたあと、6日目: 夜の会話で管理人の生活が楽しかった → 冴子を肯定する返答をしてもこのルートになる。

このルートに入るとセーブ時にG(ジェノサイド)表記になり、7日目深夜に手に入る手鏡は割れている。

【分岐: 自殺エンド】
6日目: 昼にチオに食事を与えたあと、6日目: 夜の会話で管理人の生活が最悪だった → 冴子を否定する返答。7日目: 昼にカズに食事を与えればルート確定。
7日目: 昼にアカリに食事を与えたあと、7日目: 夜に冴子と会話をしない場合もこのルートになる。

このルートに入るとセーブ時にP(サイコパス?)表記になり、7日目深夜に手に入る手鏡は冴子が映る。

【分岐: 贖罪エンド】
6日目: 昼にチオに食事を与えたあと、6日目: 夜の会話で管理人の生活が最悪だった → 冴子を否定する返答。7日目: 昼にアカリに食事を与えたあと、7日目: 夜に冴子と会話をするとこのルートへ。

このルートではセーブ時の表記に変化がなく、7日目深夜に手に入る手鏡は冴子とリンが映る。

感想(ネタバレあり)

冴子がおかしいのは見てのとおりなんだけども、特殊な環境に置かれておかしくなっていく小人たちの心情は興味深かった。大体の小人たちは早々に退場してしまうからキャラクターの深掘りが足らず軽く消費されてしまっているように見えて、実は少ない会話と深夜パートの情報から見えるものがあるのはおもしろい。

食べ物を渡す=冴子に捧げる相手を選ばされるのはストーリー上選択肢がないときはともかく、3日目(キナ or ユイ)や6日目(クララ or チオ)のプレイヤーに選択権があるときはこのゲームで恐らく最も辛い瞬間だ。特にクララについては普通に良い子で救いがないのは「SAEKOはそういうゲームだぞ」って念を押されてるような気分にさせられた。

冴子の影響は多分にあるだろうが、このゲームで最も狂っているのはリンだと思った。
冴子はルートによっては自分を見つめなおし自分の罪を認めることもあるけど、リンはどのルートにいっても等しく狂う。本編前から恐れるべき冴子に惚れ、冴子にすら気味が悪いと記憶を消されたあとも、虐殺エンドでは冴子に共感し、自殺エンドでは冴子の真似事をはじめ、贖罪エンドでは殺してと願った冴子を殺さず飼う始末だ。
ゲーム内ではストックホルム症候群(誘拐や監禁などの被害者が犯人に対して、共感や好意、さらには依存心を抱くようになる心理現象)の話が少し出てくるが、解放されたあとも変わらずだし潜在的に狂っていたのだろう。

冴子は誰かを苦しめたり、傷つけたりしないと満たされない不幸な性格になってしまったけど、それを難なく可能にする不思議な能力を手に入れてしまったこともそうだが、リンという潜在的に狂った人間と出会ったことが最大の不幸だったのかもしれない。でも、冴子の本性を知ってなお共感するような狂ったリンがいたからこそ冴子が自分を見つめなおす世界があるのかとも思える。

あと2008年設定に何か意味があるのかと考えながらプレイしてたけど、ガラケーとiPod以外に時代を感じるものはなかったように思うからたぶん意味はないよね?

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