すみれの空は家庭環境や友人関係などに問題を抱えている少女スミレが突然現れた花の精霊に後押しされていつもと違う『とびっきりの一日』を過ごそうとする物語。
とても雰囲気の良いデザインと演出に惹かれたすみれの空について10項目の思うことを挙げてレビューしてみよう。
この水彩画のような淡い色合いのビジュアルとアコースティックギターの童謡を思わせる落ち着いたサウンドの雰囲気がとてもよい。
まず公式ローンチトレーラーに惹かれるものがあるなら遊んでみて間違いない!
ネタバレ防止のため文字反転『いきなりクリアしたときのことを言うのもなんだけど、エンディングに入ったときにこの曲が流れだしたときの満足感はすごかった』
操作はとてもシンプルで基本は横移動で、ちょっとだけ奥行がある形式。
各所のポイントを調べて会話の進行、アイテムの入手、選択肢の発生、出会った人や生き物から頼まれごとをされたりする。探索と選択肢で進むアドベンチャーだ。
地面描写が直線的じゃなく円環状に歪んでいて、スミレは時計盤のような世界をエリアの右端にあるスミレの自宅から左端の終点へ向けて移動していく。これは本作のテーマである時間の経過と過去に抗おうとするスミレを描く物語ともシンクロしている(開発者インタビューより)。
少女が「一日」を過ごすADV『すみれの空』開発者インタビュー。外国人スタッフが神戸を訪れた経験からゲームが生まれた(AUTOMATON)
消極的なスミレの背中を後押しする花の精霊の登場が物語のはじまりになる。
1日しかいられない花の精霊のためにとびっきりの一日を過ごそうとするのだけど、こういう甘い言葉で何かさせようとするキャラクターは何か企んでるんじゃないか、裏切ってくるんじゃないかと警戒してしまうが……
とびっきりの一日ってなんだよって話だけども、花の精霊に言われてスミレがこっそり望んでいた願い事をノートに書き出してこれらの達成を目指すストーリー進行で目的ははっきりしてるのでわかりやすい。
別居している両親、親友だったはずなのにいじめてくる元親友などビジュアルのやわらかな印象よりずっと重い問題が描かれる。
一部の区間ではちょっとしたホラー展開もある。
すみれの行動や選択で善行を行えば綺麗な花が咲いて、悪行を行えばどす黒い花が咲く演出がある。
どちらを積み重ねるかで結末が変化するマルチエンディングになっている。
大体はどちらの選択・行動を選べば善行、悪行になるかの区別は付くし1回ミスったくらいでエンディングが変化するほどシビアなものではなさそうなので、調整しながらたまに見てみたい方を選択するというのもあり。
ゲーム内ミニゲームの類の好き嫌いは分かれるだろうけど、この田舎くさい世界に似合う子どもたちの作ったゲーム感はいいよね。
興味がなければ勝敗関係なく終わらせてさっさと次に進める。(実績に関わる)
探索にかける時間やクリア必須じゃない頼まれごとをやるかで幅はあるけど約3時間くらい。
Steamセールだと90%割引きの100円程度で購入できることもある。
悩ましい選択肢やエンディング分岐はあるけど、オートセーブのみでやり直しができないのは難点。
クリア後に確認したレビューによると実績全解除まで最低3周しないといけないそうだ。
生き物たちとの会話から亡くなったおばあちゃんには何か不思議な力があった感じを匂わせていたけども、それに付いて何か説明があったりすることはない。花の精霊がスミレの前に現れた理由とかもない。
そしていろいろな問題をスミレなりに解決していくのだが、両親が別居している根本的な問題はわからないし解決しないまま、嫌な友達は嫌なままで全てが丸く収まるハッピーエンドとはいえない。全体的に雰囲気を匂わせたまま終わる。
短編ゲームだし幼い子どもが体験した不思議な一日を描くという観点でいえばこんなものだろう。