※旧ブログの2020年記事を加筆修正し引越しさせたものになります。
アクアプラスのシミュレーションRPG+アドベンチャー『うたわれるもの』シリーズ3部作のアドベンチャー部分のみ切り取って読むことができるアプリが無料で配信されている。ストーリーが高く評価されているのでおすすめしたい。
大まかな世界観としては神秘的な力や魔法、多様な種族が登場する日本風の戦国時代を舞台に、記憶喪失の主人公が戦争に巻き込まれながら成り行きで小国のリーダーになって戦争を生き抜いていく戦記モノ。
種族が異なる特徴あるキャラクターたち、厳しい環境の戦争の合間にある家族や仲間たちとの貴重な日常、政治的な駆け引き、記憶喪失の主人公の正体など見どころはたくさん。
アプリでは戦闘がカットされてしまうから多少あっさりした感じはあるけど、話の繋がりが破綻するようなものにはなっていない。違和感があるとしたら、一作目『散りゆく者への子守歌』では主人公ハクオロの立ち絵がほぼなくて、戦闘もカットされているためハクオロの姿を見る機会があんまりなくおぼろげになってしまう。一旦公式サイト等で登場人物を見てくるといいかもしれない。あと、アドベンチャーパートのキャラクター個別ストーリーが急に始まって状況把握に一瞬迷うことがあるくらいかな。
たまにアプリが落ちたりはしたけど、チェックポイントから再開してくれるので大きく巻き戻されることはなかった。
ここから3部作アプリ版を読み終わった感想。ネタバレ注意！
・一作目『散りゆく者への子守歌』
記憶喪失の主人公ハクオロが何故かこの時代より高度な知識を持っている設定は今となってはいわゆる異世界転生モノみたいなものが溢れているから真新しさは感じず、もっと戦争を次々と繰り広げていくものを想像していたこともあり思った以上に日常パートが濃厚だったため、しばらく退屈に感じて読む速度は遅めだった。
しかし、登場人物たちの魅力に惹きこまれてからはむしろ日常パートを望むようになり「もう戦争しないでずっとここで平和に暮らそう！」と思うようになる。主人公が高度な知識を持つ理由と世界に隠された秘密の繋がりが明らかになっていくにつれ、終盤は一気読みするほどストーリーに没頭していた。大胆すぎるあの大きな謎と設定を繋げて物語を締めくくる創りは見事で感心させられた。
・二作目『偽りの仮面』
主人公ハクがまたもや記憶喪失の人間という引き続きの設定だが、散りゆく者への子守歌の知識があるからハクの正体が何者か予想と妄想を膨らませながら読み進めるのは充実した時間だった。
ただ、一国の皇だった前作と比べたらハクの立場は小さく、戦争への関りも裏方といった形で物語全体としては規模の小さいものに収まっている。
三部作ではあるけれど、実質この二作目と三作目は前編・後編みたいなもので、前編の偽りの仮面は他二作より盛り上がりに欠けるのは仕方がないと思う。
それでも、ラストにオシュトルの仮面と意思を引き継いで三作目へと繋げるところの盛り上がりはシリーズ屈指のシーンだと挙げたい。
・三作目『二人の白皇』
偽りの仮面から続く戦争と事件が締めくくられる後編であり、シリーズ全体の大詰めとなる最終章。
全体的にシリアスな状況の中で描かれる日常シーンはハクが抱える秘密が絶妙に交差してこれまでと違った緊張感があった。
散りゆく者への子守歌に関わる設定やキャラクターが登場してからはもう息をつく暇もない展開で、ボリュームはかなりあったはずなのにあっという間に感じてしまった。
この三部作で描かれたストーリーはまさに壮大な大河ドラマのようで、あれだけ大掛かりとなった各作品の設定をうまく絡めて最終的に満足のいく大団円へと導いてくれた。
・気に入ったキャラクター
どれも魅力あるキャラクターたちだったけれど、特に気に入ったのはクオンとキウルかな。
クオンはもう一人の主人公と言っていいほどカッコいい女性キャラで最初の方から気に入ってた。キウルは作中で精神的に大きく成長する過程がしっかり描かれていて徐々に気に入っていった。
・ストーリーの不満点
不満って言うと大袈裟だけども、自分には合わなかったなと思う点は偽りの仮面から二人の白皇に続く大きな事件の黒幕に魅力を感じられなかったところだ。思わせ振りなことは喋っていたけど、それまで地味で存在感の薄かった奴が実は裏で糸を引いていたと言われても、急に現れた黒幕としか見れなくて納得感に欠けた。
動機を覆す実は親に愛されていた云々を知ったあとに改めて敵となって復活する展開も必要だったのかよくわからない。そこは改心するところじゃないの？ と疑問のまま退場してしまった。
・褪せないストーリー
スマホで読む『うたわれるもの』はスマホアプリ『うたわれるもの ロストフラグ』の宣伝を兼ねて無料配信したんだと思うけど、有料でいいからこういったストーリーに焦点を当てたアプリはもっと増えてほしいな。
サービス終了するスマホゲームのスタンドアローン版が発表されるのを見るようになった。同じように過去のゲームで今となっては古くなってしまったゲームシステム故に遊び辛いと感じるゲームでも、褪せることのない優れたストーリーのゲームはたくさんあるはずだ。