ゲーム開発とAI使用に関する問題・ニュースを立て続けに見ることになり、自身も最近それで思うことがあったので、ニュースを整理しつつ自分の考えもまとめたくなった。
定期開催しているSteam NEXTフェス(発売前の新作ゲーム無料体験版をたくさん遊べる公式オンラインイベント)は、気になるゲームを探せるいいチャンスと楽しみにしていて、いつも遊んだ体験版ゲームのレビューをしていた。
しかし、先月のNEXTフェスではいくつか遊んで『何か自分の好みに合うゲームに出会えないな』と感じ、その後もしばらく探してみたのだけど『ゲーム数は見切れないほど多いのに、好みの作品が見つけられず』諦めることになった。
AUTOMATONの記事によると、10月のSteam NEXTフェスの参加作品数は7000本を超えていたという。前回6月の約4300本から急激に増加し、その背景には生成AIによる開発効率向上があるのではないかと指摘されている。
別の記事では、ゲーム投稿サイトであるitch.ioでも新規ゲームページの作成数がわずか2ヵ月で倍増したと報告されている。こちらも背景にはAIを活用したゲーム制作の急増があるとみられている。
こうした状況を見ると、ゲーム業界は明らかに新しい時代へ入りつつある。AIは便利な反面、その付き合い方は今のままではいけないように思う。
AIは個人開発者や小規模チームにとって非常に大きな武器になり得る。
アイデア出し、開発初期のプロトタイピング、プログラムの作成支援、デバッグ、翻訳の補助などなど、こうした用途で活用できれば、これまで人手や資金の問題で実現できなかったゲームが世に出られる可能性がある。
大手企業にとってもAI活用でコストを抑えられるなら、その分重要な部分のクオリティアップに人手や資金をかけられる。AIによって良いゲームが増えるのなら、それは歓迎すべきことだと思う。
ただ、ゲームの供給量は増えても消費する量は変わらない。AIによって供給量が爆発的に増えることで良作ゲームが埋もれ、ユーザーも探すことを諦めるという状況が生まれつつある。
こうした状況を受けて、一部にはAI利用作品を検索から除外したいという意見も出始め、さっそくゲーム投稿サイトであるitch.ioで、AI作品の除外フィルターを拡張する対応がされた(元々あるにはあったが使いやすくした)。
11月4日現在、itch.ioのタグから検索するページを見にいくとトップには『AIなし』があり、他のタグを見てもよく一緒にタグ付けされる項目として『AIなし』が並んでいる。ここだけ見るとAIなしを求めるユーザーは多いようだ。
さらにitch.ioでは、AIで作成された低品質なコンテンツ『AIスロップ』を数テラバイト分削除したと昨日投稿された。
しかし、またしばらくするとAIで作成されるゲームが大量に配信されるだろうから、これは一時的な対処でしかない。
それに、大なり小なり今後AIはゲーム開発において当たり前の道具になっていく可能性が高い。全部AI任せでちゃんと動作するのかもわからないゲームから、翻訳やデバッグなど作業効率化に使われたゲームまで様々ある中で、ひとまとめにAI利用作品として検索から除外するとか、AIスロップとして削除するという選択肢はあまり意味を持たなくなってくる。
itch.ioではAIタグにも分類がある。
立ち絵や背景、UI、テクスチャなどの画像作成にAIを使用したことを示す『AIグラフィックス』というタグ。他にも効果音やBGM、ボイスの作成にAIを使用したことを示す『AIオーディオ』というタグなどがある。
こうしたAI使用の中でも特定の条件のみ検索から除外する選択肢があれば、一部のAIに思うところがあったとしてもゲームを探しやすくなる。
単純なAI使用の有無ではなく、使い方の透明性を高めることがこれからやってくるかもしれないAI時代のゲームストア運営に必要なのではないかと思う。
もう一つ気になるのは品質管理だ。
Steamでゲームをリリースするため、Valveによる審査を受ける申請前に『最低5分間のプレイ』が新たに義務付けされたらしい。
起動しない、頻繁なクラッシュ、進行不能バグなどそもそも遊べない粗悪ゲームはこれである程度は除外できるかもしれないが、これくらいの条件なら突破されるテンプレートが出来上がり対応されそうだ。
Valveによる審査も画像チェックやレーティング(性的・暴力的な表現)確認で、普通にプレイしてクリアまでチェックしているわけではないから、ただ品質が悪いとか他作品のコピーまでは把握できない。
まだ技術的に難しいだろうけど、それこそAIにゲームをクリアまでプレイ(デバッグ)させて審査できるようになれば、最低5分間プレイの条件を突破しつつもまともに遊べない瞬間があれば弾くことができるし、露骨なコピー作品も警告することができる。
厳しい審査を導入すると今度はゲーム開発の参入障壁が高くなってしまうから、現実的には先に挙げたそもそも遊べないレベルのゲームを自動判定するだけでもひとまずは十分だろうか。
品質が悪いという理由で除外するのをValveなどストア運営側にさせるのは困難だろう。そこはもうユーザー間のレビューや口コミで判断するしかないと思う。世の中には『木になって木を眺める』だけのゲームにだって需要があるのだから。
既存ゲームのコピー・クローンは論外で、既に発売前に模倣されないよう体験版の一般公開を中止した例も出ている。
これが当たり前になってしまうと、宣伝が大事な新規IPや規模の小さいチームのゲームはユーザーに知ってもらう機会を失うし、体験版が遊べないことで購入判断を下せず様子見される恐れがある。
これについては話題になったAIモデル側が既存ゲームの模倣を防ぐための制限を導入する動きがあるものの、いずれ違うAIモデルで同じことができるようになる気がしている。
模倣(コピー、クローン)を取り締まるのは難しい。
特許侵害レベルならまだわかりやすいけど、キャラクターやシステム、UIなどのデザインといった所、一言で言ってしまうと雰囲気が似ているという話になると、どこまで似ていたらダメだと決められるのか誰にも判断できない。これについてはAI使用による問題以前から頻繁に話題になることがあるけど、着地点は未だ見えない。
AIによってゲーム開発は確実に変わってくる。個人・小規模でもゲームを作りやすくなり、おもしろい作品が生まれる可能性はこれまで以上に広がっている。一方で、作品数の爆発的増加によって発見性の低下という新たな問題も発生している。
でも必要なのはAIの排除ではなく、『どこに』とか『どこまで』といったAI使用範囲の透明化や、ユーザーが適切に検索・選別できる仕組みを作ることがまずは必要だと思っている。
AIはゲーム業界の未来を豊かにする可能性も破壊する可能性も持っている。排除という選択肢はそもそも現実的に不可能だし、この黎明期のうちに健全なルール作りが進むことを期待したい。