集英社ゲームズのノベルアドベンチャー『シュレディンガーズ・コール』をプレイし、2章までクリアした時点でレビュー記事を書いてみる。
集英社ゲームズといえば直近で都市伝説解体センターがヒットして、個人的にも小説版やオーディオドラマを購入するほどハマったので期待していた。都市伝説解体センターが出る前の2024年10月からウィッシュリストに入っててどこで知ったのかも覚えてなかったけど、元から何か惹かれてるものがあったのだと思う。
※ストーリーの核心に触れるネタバレはしないものの、序盤に知れる話を含みます。
・世界観と導入
物語の舞台は、月が落ちてしまい、まもなく終焉を迎える世界。
記憶を失っている少女・メアリは、不思議な空間の電話だけが置かれた部屋で目を覚ます。謎めいた猫・ハムレットに導かれるまま、メアリは生と死の狭間で苦しむ魂たちと電話を通して交流することになる。
月が落ちたことで通話が途切れてしまった魂たちは、曖昧な存在として彷徨っている。
彼らは記憶も情緒も不安定で、メアリが話し相手になることで徐々に自分を取り戻していく。そして世界が終わる直前にしていた最後の通話から未練を導き出し、それを解消する方法を探していく。
各章は1話完結型で、毎回異なる人物の物語が展開される。
・ゲームプレイ
基本的には選択肢を選ぶことでストーリーが進む形式。
中にはメアリが小まめに残してくれるメモの項目から選択するパターンもある。
メアリが残してくれるメモはゲーム的にも『情報整理』『選択肢の根拠』『プレイヤーの思考補助』として機能し、物語とゲームシステムが自然に結びついているのが良い。
自分自身ストーリー系ゲームをするときはメモを取るタイプだけど、メアリのメモは参考になると思えるほど丁寧に作られてる。
実際には恐らく一本道なのだけど、選択肢の頻度が多く、選択時の演出や選択したことを何度も復唱されたりして「この選択で未来が変わった=分岐したのでは?」と錯覚させるほどの緊張感がある。
オートセーブのみで任意セーブ不可という仕様も効いてる。戻れないというプレッシャーが物語の切迫感とよく噛み合っている。
ノベルゲームではつい「わざと間違った選択肢を選んで反応を見たい」という衝動が出るし、本作は間違った選択肢を選んでもノーペナルティですぐやり直しになるっぽいけど、今回は物語に引き込まれすぎてふざける気になれなかった。それほど、キャラクターの感情や状況が切実に描かれてる。
・ストーリーの魅力
終わる世界が前提だから、基本的には悲しく切ない話が続く。
でも、ただ暗いだけではなくて、メアリが話し相手になることで相手に救いが生まれるという構造が温かさを残してくれる。
最初は話し相手も記憶が曖昧だから情報が断片的なのだけど、徐々に記憶の隙間が埋まっていき、終盤に話を整理して真実を明かす展開は切なくもすっきりさせられる。
各章で電話相手の問題を解決していく一方で、メアリ自身にも話し相手とは共通する苦しみがあることが示唆される。章が進むごとにメアリの背景が少しずつ明かされていき、きっと最終章にはメアリ自身の真実が語られるのだろうと自然に予想できる構成になっている。
・上手い演出
独特な手書き風のキャラクターと背景で、選択肢を選んだ瞬間や場面転換のエフェクト・アニメーションがとても丁寧。静かな世界の終わりって感じの雰囲気にぴったりの質感がする。
ボイスはあるようでない疑似ボイス形式で、音で何を喋っているかはわからないけど逆にこの曖昧な世界観との相性は良い。
音楽も雰囲気づくりに大きく貢献してて、イヤホンを推奨したい没入感がある。
この辺りのローテク風な中で演出面を際立たせるのは都市伝説解体センターでも感じた部分で、集英社ゲームズの強みなのかもしれないと思った。
・ボリュームと構成
まだ全クリアはしてないけども、1章あたり約90分で、Steam実績をチラッと見ると全5章あるように見えた。短編ながら1章ごとにしっかり起承転結があって、物語を読み終えたという読後感を毎章心地よく感じられると思う。
シュレディンガーズ・コールは(たぶん)一本道でありながら選択の緊張感があり、悲しさの中に救いを与えてくれるノベルゲームだと感じた。
1章完結の物語と全体通して描かれるであろうメアリ自身の物語は結末が気になる構成で、クリアまで楽しみにさせてくれてるし、手書き風アートと音楽の相性は抜群で演出にしっかり生かせてる。
まだ2章プレイしただけながらもう心に残る体験を与えてくれたと実感してる。
終末世界の静けさの中で、誰かの最後に寄り添う優しさという空気を味わえる。そんなゲームだ。