ムーンレスムーン レビュー&感想

夜になると別の世界に迷い込む少女の物語『ムーンレスムーン』のレビュー&クリア感想。

レビュー(ネタバレなし)

・ストーリー概要
学生のヨミチは夜になると別の世界に迷い込む。月の砂漠、トンネルの中の喫茶店、空に浮かぶ島など不思議な世界を訪れ、そこで出会う人々との交流に居心地の良さを感じている。しかし、この別世界に依存しているのを自覚してこのままで本当にいいのだろうかと苦悩していく。

・ゲームの特徴
テキストを読み進めるノベルパートと空欄にキーワードを埋めるパズル要素のゲーム内ではRIDDLEパートと呼ばれる二つに分かれる。

ノベルパートはテキストを進めるだけで選択肢とかはなし、落ち着いた雰囲気のオリジナル楽曲は心地よく何気ない会話はキャラクターたちがそこで生きていることを感じさせる。
セリフに誰が喋っているのか表記はされていないけど立ち絵にフォーカスが当たるし文脈でわからないとこもなかったと思う。
キャラの立ち絵パターンが1つずつしかないのはちょっと残念だった。ヨミチの気だるげな表情も悪くないけど作中はもっといろんな表情をしているはずだったから。

ノベルパート

RIDDLEパートは空欄付きの文章が出てくるので画面上の単語をクリックしてキーワードを入手し正解を当てはめることで次の物語に進めるパズル要素。

RIDDLEパート

時間制限はないし間違ってもペナルティもないから難しいことはない。なんならスキップすることもできる。
問題の空欄付き文章をクリックすると入手できるキーワード数が表示されるから答えがないと思ったら確認してみるといい。
複数の正解パターンがあってストーリーや会話が分岐する仕掛けみたいなのはもっと見たかったかな。分岐要素は最終のエンディング分岐だけでそこまでは一本道だからリプレイ性はほぼない。

自動セーブのみで任意セーブはないけどクリア後にギャラリーが解放されてエピソードごとに見返すことはできるし、音楽やスチルなど一通り見たいものは用意されている。

そしてある意味この作品のメインコンテンツと言えるのはミュージックビデオ(以下MV)でエピソードの区切りに物語に沿って作られた3つのMVを鑑賞することができる。ちゃんとゲームの世界観を共有するものだからMV単品でもいいだろうけどゲームプレイと併せて見るとより良いものとなっている。

アウトライン・シーサイド

エピソード区切りの画面で表示される楽曲提供者のとこをクリックすると関連ページに飛べるようになってるので気に入ったら見にいける。
ムーンレスムーン発売前に公式でMV曲を少し見られるストリーミングライブ(Youtube:【ANMC】Moonless Moon Streaming Live)をやっていたのでそれを聞いてみるのもいい。Steamで購入できるサントラには残念ながらMV楽曲は入っていないので注意。

・ボリュームとか見どころとか
ゲームクリアまでは2~3時間程度の短編だけどもクリア後の満足感とオリジナル楽曲+MVの出来の良さで十分に楽しめた。もっといろんな世界が見られたらよかったとは思うけど、そう思うのはそれだけムーンレスムーンの世界に惹きこまれたからだと思える。
壮大な冒険があるわけではなく、しばらく何気ない雑談をしているばかりで退屈と感じることはあるかもしれないけど、別世界に依存するヨミチの心情に共感したり別世界って結局なんだろう? とか考えながらプレイしていると急にこの世界に対する思い込みというか感覚がズレる瞬間があってそこからの物語は楽しめると思う。

感想(既クリア推奨・ネタバレあり)

別世界については親からの連絡とかをきっかけに元の世界へ戻ることからヨミチの妄想の世界なのかなぁと真っ先に思い浮かんだしありそうな設定だよねと思うところだけど、それを見越したかのようにヨミチの方から『自分にとって都合の良い世界を想像しているだけかも』と自覚した描写を見せられてじゃあ違うかとそれはそれでワクワクさせてくれた。
月の話をきっかけに『もしかしてこの世界何かおかしいか?』という疑問からはじまって世界の秘密が明らかになり標本箱と標本の蝶による世界を移動する設定は新鮮でおもしろかった。

ヨミチが悩んでいた居心地の良い別世界への依存はちょっと違うかもしれないけどだらだらと過ごす現状に良くないなぁと思いつつもなかなかやめられないとか現実世界でもあるし、後半の変化することへの恐れの話は学校の進級や職場の移動、引っ越しとかって身近な話に当てはまる。そう考えてみるといろいろ共感できるストーリーだった。
エンディング2のホシENDとエンディング3のイトENDは変化を好むホシと変化を恐れるイトが対比になっていてどちらが正しいというわけじゃないと示してくれるのはよかった。幼馴染のアサヒとの関係にも何かしら回答がほしかった気はするけど仲良かった友人とも環境の変化で疎遠になるってよくある話で作中の微妙な関係のままの結末もリアルといえる。もしかしたらアサヒも別世界へ行くようになってそっちの世界を選んだのかもしれないね。

ゲームと世界観を共有するMVは雰囲気重視のストーリーテリング完成形の一つと思えたからこういうのもっと増えたらいいな。

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