クリア後感想
※パラノマサイト FILE23 本所七不思議ストーリーのネタバレを含みます。既プレイ必須。
ゲーム・ストーリー部分について
『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』を最後まで遊び終えてまず強く感じたのは、プレイヤーという存在の扱い方の巧妙さだった。
『神の視点にいるプレイヤーがなぜ各ルートで介入できるのか』という理由付けが終盤で明かされる瞬間の衝撃は本作ならではの体験だったと思う。
音量調整やセーブ等のゲーム的な介入方法になっていることも何か意味があるのではと勝手に深読みしていたけど、そこまでは特に理由がないようで勝手に拍子抜けしてた。
序盤は呪主同士が殺し合うデスゲーム的な雰囲気が強かったけど、昼間の調査パートに入ると一転してミステリー色が濃くなってきた。
霊夜祭を発生させた黒幕を止めようとする味方陣営が集まり、それぞれが追っていた複数の事件が繋がって正体の掴めない犯人を探る展開へと移り変わっていく。この構成の変化が物語の幅をぐっと広げていた。
複数キャラクターの視点を切り替えながら進むザッピングシステムも見事に機能し、各ルートが自然に合流していく流れはとても気持ちよかった。
情報の出し方も巧みで、新しい手がかりが次々と提示されるため、考察が途切れる瞬間がほとんどない。答え合わせをしてみれば、意外と予想の範囲内に収まる部分も多いのだけれど、ヒハク石鹸と山森ナツヱのように意味ありげで結局ほぼ意味のないミスリードや、たまに王道を外してくる要素が散りばめられていて、推理を簡単に確定させてくれない作りのおかげで、最後まで推理が退屈しなかった。
TIPS(資料、登場人物一覧)の読み応えも印象的だった。単なる補足ではなく読んだ方が確実に楽しめる内容で、特に終盤の謎解きは読み込まないと理解が追いつかないほどになる。
呪詛珠の持ち主メモなど、プレイヤーの推理を整理してくれる情報は親切で、テキストアドベンチャーとしての密度の高さをしっかり感じられた。
呪詛珠の持ち主や呪いの発動条件を探る展開は終始おもしろく、候補が複数いたことで最後まで断定できない緊張感が続いたのが良かった。呪主の正体自体は「まあそうだろうな」という落ち着き方だったが、そこに至るまでの揺さぶりが上手い。
結末はあっさりしていたものの、蘇りの秘術が消える世界になるという落としどころは納得できる。細かく描かれていないけど、あの結末の世界でも約子や春恵、麻由たち残された面々は気持ちの整理がついて前に進んでいると思いたい。
各キャラクターについて思うこと
・興家彰吾と福永葉子
この二人は序盤の中心人物ながらしばらく出番がなく、最後の最後で重要な役割が明かされるというある意味で味方・敵双方の黒幕的存在だった。物語が進むにつれ二人の存在が浮いているのが気になっていたが、終盤でその理由が明かされる瞬間の衝撃は大きかった。
最初のルートで彰吾が滓魂を集めきった世界で何が起こったのかは明確にされていないけど、考えられる展開としては葉子を蘇らせてしまい殺されてしまったか、土御門晴曼が葉子を蘇らせるのを止めるために彰吾を殺したか、このあたりかな。
クリア後にプロローグを見返すと、彰吾の記憶が曖昧なことや葉子の何気ない言葉の意味が理解できて「なるほど」と思えた。こういう初回だとわからないのに振り返ってみるとよくわかる仕掛けがあるのは好みだ。
彰吾パートの初回プレイ時に『呪詛行使』を一度も押さなかったため、パート終わりの案内人の質問(彰吾が呪い殺したのは何人か?)の意図がわからず、「葉子だけ数に入ってないから、葉子はやってないんだろう」と素直に解釈してしまった。本来は呪詛行使を押したり押さなかったりして「数が合わない!?」と混乱させる仕掛けだったように思う。
・志岐間春恵と櫂利飛太
春恵はいつか呪い殺しに走るのではと疑ってて危うい瞬間もあったけど、正統ルートでは何も起こらず呪詛珠を手放してくれた。自分がひき逃げした被害者とか、葛飾北斎を蘇らせたいって不純な目的が目立つ中で、誘拐犯に殺された息子という純粋に同情しやすい春恵には、手を汚さず耐えてくれてよかった。
この結果は三枚目キャラに見せかけて実は優秀なリヒタが春恵のメンタルを支えつつ誘拐事件の真相に辿り着いてくれたからこそで、リヒタの有能さとポジティブな存在感が春恵と物語を大きく支えていたのは間違いない。
・津詰徹生と襟尾純
津詰は警察という立場もあって、呪いを止める味方陣営のリーダーであり、黒幕関連を除けば最も事件に関わる主人公的存在だった。渋いベテラン刑事かと思いきや、エリオとの掛け合いで魅力が増し、二人セットで非常に良いキャラになっていた。
呪主に選ばれてて「蘇らせたい誰かがいるのでは」と疑ったが、どうやら本当にいないらしい。
吉見の事件の話をしているときに一瞬そういう気持ちになったから選ばれたって感じなのかな。そうでなければ、あそこはエリオが選ばれるべきだと思う。
終盤の津詰があやめに殺された後、エリオとミヲが行動を共にするシーンあたりで「やっぱり主人公刑事の相棒は怪しい。犯人はヤス!、エリオ黒幕か!?」を一瞬疑ったが、全くそんなことはなかった。
・逆崎約子と黒鈴ミヲ
約子は白石の件までは重要な役割だったが、呪詛珠を失ってからは当たり前だけど普通の女子高生になり、物語上の存在感は薄れてた。ミヲが便利すぎるキャラで退場を恐れていたが生き残ってくれて嬉しい。心霊対策室との関係とかもっと掘り下げてほしかったけど、本筋から逸れるし仕方ないか。
白石の死因が何の思惑もないただの交通事故だったのは肩透かしだったが、これがあったことで他の事件も「実は事件に関係のない偶然なのでは?」と疑うようになり、シナリオの誘導の巧さを感じた。ついでに並垣の小物っぷりを増す要素にもなってた。
・蝶澤麻由
後半登場で出番は多くないが、吉見との関係は丁寧に描かれ、蘇りの秘術に頼らない選択を迷いなく下す姿は格好良かった。お守り入手の貢献や重要な呪詛珠を所持してて地味なようで存在感は大きかった。
・葦宮誠(根島史周)
篠の生まれ変わり(?)となった赤ん坊を捨てる件はゲーム内で強く批判されていたが、実際に愛していた人が赤ん坊になってしまったらどう向き合うべきかは難しい部分もある。
もちろん捨てるのは論外だが、殺人を重ねてやっと報われたと思った瞬間にそんな状況になれば、冷静でいられないのも理解はできる。
葦宮=根島が確定していない頃は「怪しすぎて逆に怪しくない!」の逆張りをしていたけど、そのまんまだった。これもまた、以降の推理で変に裏をかいても間違っているのではと迷わせる要因になってた。
・灯野あやめ
葛飾北斎の復活を本気で目指しているミステリアスでサイコな悪女の雰囲気で、根島関連事件のラストを飾る相手としては良さげだったが、最後に判明する呪いの持ち主にしては父・津詰の呪い条件と似たものにしているのだろうけど、呪い条件が案外普通で面白みは薄かった。
津詰との最後のやり取りは呪い条件を探る掛け合いとかでなく、すれ違った家族ストーリー展開でそれはそれでよかったものの、どっちかといえば津詰の魅力が際立ち、灯野に対してそこまで感情移入できなかった。
・並垣祐太郎
強い呪詛珠を得たのに見せ場がほぼない“かませ”キャラ。最終的にはひき逃げがバレて捕まり救いもない。物語上の関係性で言えば、彰吾と葉子並みに浮いていたから実は重要な役割が……ないのかよ!
・山森ナツヱと弓岡巧己
岩井や根島に影響を与える役割はあったものの、霊夜祭関連については何かありそうでほぼ何もないミスリード要員だった。
山森ナツヱは公式サイトの登場人物欄に載っているのに直接は登場せず、インチキ霊媒師みたいな扱いで終わり。それを信仰する弓岡巧己も仕事ができる風で追い詰められるとボロが出るタイプで、すぐにバレる嘘も吐きまくり、自ら呪主になる度胸もないあの雰囲気でまさかの小物だった。
とはいえ『陰謀の裏に巨大企業が潜んでいるかも』という王道を外してきたのは、良い意味で推理を鈍らせる要因になってくれたと思う。


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