SteamとEpicを比べながら、Steamを使う理由を考える

まえがき

AUTOMATONの記事『Epic Gamesのボス、「Steamの運営元Valveがゲーム業界を停滞させてきた」と発言するもツッコミ殺到。“Steamの強み”は、業界にとって問題か否か』をテーマにして思ったことの話。

ゲーム販売プラットフォームEpic Gamesの偉い人が同業のSteamを運営するValveに対してお気持ち表明しているって話題だ。ただ、この手の発言自体は過去にも繰り返されており、それほど目新しいことではない。
しかし、SteamがPCゲームプラットフォーム一強ともいえる今の状況が必ずしもいいとはいえないのもそのとおりなので、この話題に「また言ってるよ」と聞き逃さず少しだけ考えてみることにした。

Steamを利用し、Epicを利用していない理由

とりあえず、テーマの記事内で言われている「Steamはストア税(開発者向けの手数料)が高い」関連の部分は開発者向けの話だから置いておく。ひとりのユーザー目線でなぜSteamを利用し、Epic Gamesは利用していないのか考えてみたい。

①既にある資産を置いていけない
これはテーマ記事で指摘もされている通り。先に利用しているSteamにはもういくつもの購入済みゲームがあるため、新しくゲームを買う場所を提供されても、これまで積み上げてきたライブラリを置いて他のプラットフォームに移行するほどの理由はなかなか見つからない。

これはパッケージ全盛期からリスクを負って先発していることの強みであるため、覆すにはその気にさせる理由が必要だ。Epic側としてはそのひとつがストア税の優位で、ユーザーとしても開発者側に稼いでもらって次のゲームに繋げてほしいという思いはあるものの、自身が損してまでってなると躊躇してしまう。

任天堂のダウンロードゲームを購入するときもあるけど、専用ゲームがあるのと間違いなく携帯機の方が遊びやすいってゲームはもう自分の中で割り切れているから、SteamとEpicのようにほぼ販売しているゲームが競合しているものとは別枠で問題なく運用できている。

②無料配布ゲームについて
Epicの強みといえる無料ゲームの配布。これは上記①にあるようにライブラリのゲーム数を増やすことで離れにくくするための手段といえる。
しかし、毎週配布されているゲームの中には日本ではあまり知名度の高くないものや、日本語非対応のものが少なくない。よほど海外のインディーゲームに興味がある人でもなければ日本ユーザーが魅力を感じることはあまりないように思う。
たまに有名どころのタイトルが配布されるときは、ゲームメディアやSNSで話題になるのでそのときだけ受け取ればいいということで落ち着いている。

③充実のレビュー
個人的にSteam最大の強みはレビュー機能だと思っている。
ゲーム購入を判断するときにレビューを参考にすることがあるけど、よくある5段階評価や高評価率は言語や文化圏、個人によって付け方が異なるからあまり参考にならないことがある。
それでも、Steamレビューはユーザーが自由にテキストのレビューを投稿することができるから、具体的にどういう感想を持ったのかわかる。極端な思想やこだわりのある投稿者だったらそれも参考にならなくなるけど、閲覧者はその投稿者のプレイ時間、環境、言語、他レビューを見てそれが判断に値するものか区別する材料も与えられている。

期間ごとのレビューを見られるのも大きい。
アップデートで評価が逆転したり、とある出来事(炎上、不祥事、政治問題)をきっかけに極端なレビュー爆撃がされたりといったことがあっても、期間で絞れば直近の新鮮なレビューのみ見ることができる。

Steamレビュー期間グラフ
異常なレビュー爆撃はレビュースコアから除外してくれる。見たければ見ることもできる。

EpicもOpenCritic(メタクリティックのようなゲーム特化型のレビュー集約サイト)がゲームページには載せられているが、いちいち外部サイトに飛ばされるのは面倒に感じる。

④コミュニティ、MODの充実
Steamはゲームを買う場所であると同時に、ゲームごとの掲示板やガイド(攻略情報や解説)、MODを共有する場所もある。開発者側がそこにプレイガイドを載せたり、不具合情報を募っている場合もあって上手く利用されている。

⑤ゲームを発見する楽しみ
新しく遊ぶゲームを探すときもSteamを利用することが多い。
それぞれのストアトップページを見ると『直近に登場したゲーム』、『自身のプレイ履歴に基づいたおすすめ』、『セール中のゲーム』など同じような情報が紹介されているけど、なんならトップページはEpicの方が情報量は多いように見える。

Epicストア

ただ、『トップセラー』や『プレイヤーの評価がもっとも高い』、『基本プレイ無料のトップゲーム』など、Epicはほぼ変わり映えしない項目もあって新たなゲームを探す目的としては不要だ。

各ゲームのページへいくと、Steamは先に書いたとおりレビューが充実しているし、そのゲームの類似品が紹介されていたりする。あと、個人的に嬉しいのは開発元・パブリッシャーのページに飛べて同開発のゲームを探すことだってできる。
EpicはDLCとアドオンの表示が大きくてそのゲームの魅力を伝えようって感じが見えるけど、レビューやシステム要件より上に表示されてもゲームを探す段階で先に気になる部分ではない。


他にもライブラリの管理のしやすさ・見やすさ等があるけど、これは使い慣れているってこともあるだろうからここまでにしておこう。

Epicに期待すること

こうして並べてみると、結局Steamだけで十分って結論になりそうだけども、競争相手のいない市場独占状態になってしまうと手数料の増加やサービス改善の鈍化など、開発側・ユーザー側の双方にとって悪いことになってもそれを止めることはできなくなる。
とはいえ、それでSteam(Valve)が悪いと批判しても意味がなく、Steamにない魅力を持つ競争相手になれるプラットフォームが現れることを期待した方が健全だと思う。


ひとつホットな観点でSteamとEpicの差に『生成AI利用に対する姿勢』がある。
Steamは生成AI利用の開示制度を採用している一方、EpicではSteamのような利用開示は求められていない。今後もそうだとは言えないけど、テーマ記事に出てきたEpicのTim氏は生成AI活用に積極的な姿勢であることは過去発言している。

Steam 生成AI開示

ゲーム制作に生成AIが加わってくるのは避けられないことではあるが、それがどこまで技術的に可能で、法的・道徳的に許されていくのか現状だれも読めない黎明期といえる現状。この姿勢の違いは今後明暗を分かれるテーマになるかもしれない。
なんにせよ、生成AIに慎重なグループと積極的なグループがあるからこそ、どちらの意見も活発に出てくるのならそれはいいことだと思う。


今回の記事を読んで自分の考えを見直したとき、Epicは開発者の利益や自由を重視し、Steamはユーザー向けの利便性やコミュニティを重視しているように感じた。その違いはストア税や生成AIへの姿勢にも表れているように見える。
自分自身は今後もSteamを使い続けると思う。それでもSteam一強が続くより、Epicをはじめとした競合が存在し、お互いを意識しながら進化していく方がユーザーにとっても開発者にとっても健全だ。
だからこそ「またEpicがSteamに文句を言ってるよ……」で終わらせるのではなく、なぜSteamが支持されているのか、Epicは何を武器に戦うべきなのかを考えるきっかけとしては面白い話題だった。

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