フリーゲームが貢献してきた現代のゲーム文化

小規模ゲーム作者のためのコンテスト『有料フリーゲームタグ』

こういう企画があると教えてもらい良い活動だなと思ったので紹介がてら、フリーゲームとインディーゲームについて自分の思うところを書いてみたくなった。

小規模ゲーム作者のためのコンテスト『有料フリーゲームタグ』について

どういった経緯ではじめたのかは詳細がリンク先にあるけども、自分なりの解釈と要約をすると世間にあまり知られていない小規模ゲーム(ここでは有料フリーゲームと呼んでいる)の間でコンテストを実施して賞を与えることで「このゲームは何かのゲームコンテストで受賞して評価されているらしい」と多くの人に知ってもらうきっかけを作りたいというものだ。これはゲーム開発者のモチベーションにも繋がる。

個人運営の企画とクラウドファンディングという字面だけ見ると踏み出しにくいものだからまだ様子を見ているところだけど、やろうとしていることは共感できるものがあるので応援したいと思う。

クオリティが上がり続けるインディーゲーム

近年のインディーゲームはクオリティが本当に高い。
一昔前に日本のインディーゲーム=フリーゲームといったらRPGツクール製を真っ先に思い浮かべたものだけど、ゲーム制作ツールが充実してきて大手企業の開発ゲームと比較しても遜色ないものが登場するようになった。
作っているのは個人製作から趣味のサークル活動、企業の少人数チーム、独立した実績あるプロまでと規模が幅広く、ついには大手パブリッシャーから支援を受けている所まであって、もはやどこからがインディーゲームなのかわからなくなってくる。

日本でインディーゲームが馴染みのある言葉になる前、2000年代はプロでない人たちが製作したゲームを無料で配布するフリーゲームが流行した。(密かにプロは混じっていたかもしれないが)
フリーゲームの特徴は文字通り無料でゲームが遊べることだった。今でこそ無料で遊べるゲームは珍しくないけど、当時は他にない大きな強みだった。
そこから口コミやニコニコ動画でのゲーム実況などで話題になって有名になったものは数多く、いくつか例を挙げるなら洞窟物語、ゆめにっき、青鬼などがある。
他にもコミケ発のいわゆる同人ゲームも、有料という違いはありながらフリーゲームと同じくプロでない人たちが作ったゲームを遊べるコンテンツとしてこの流れの中にいた。

フリーゲームが貢献してきた現代ゲーム文化の流れ

フリーゲーム全盛期の2000年代、まだゲームは現物のパッケージ版を購入するのが主流だった。
フリーゲームを遊ぶために、はじめてインターネットでゲームをダウンロードしたという人はたくさんいたはずで、ゲームをダウンロードで手に入れるという文化を根付かせる牽引役の一つになっていたと思う。

フリーゲームを知ってもらうきっかけになるゲーム実況もこの頃からはじまって、当時は企業販売のゲームを動画や生配信でプレイすること自体が曖昧なグレー状態で、フリーゲームは実況のしやすさも特徴だった。
今は企業からガイドラインが出されてルールの範囲内で許可されたゲームは増えた。無名のフリーゲームが有名になる流れがいくつもあって、企業としても可能性のあるものだと認められたからこその現状だろう。

こうしたゲームダウンロード文化やゲーム実況のルール化、そして無料のゲームというフリーゲームの大きな特徴も、今や名のあるゲームが無料で配布されるサービスや基本無料でゲーム内課金をするビジネスモデルの変化、無料でなくてもセールやゲームパスから格安で有名タイトルが遊べるようになったりと、現代ゲーム文化では当たり前になった。
結果としてフリーゲームの強みは減ってしまったけど、大きく貢献してきたことは間違いない。

これからのフリーゲーム

インディーゲームのクオリティがどんどん高くなってユーザーの目が肥えてくると、本当に小規模なインディーゲームを開発している所は公開することに抵抗が出てくるかもしれない。
そういう点でインディーゲームよりさらに小規模なフリーゲームという枠があってもいいと思う。もう無料のゲームは珍しくないし、小規模でも有料のゲームがあるからフリーゲームという言葉に違和感はあるかもしれないが、小規模だからこそ『自由』に作れるという意味でフリーゲームと考えれば別に不思議な話じゃない。

企業が関わってたり、生活を削って趣味を越えて製作しているインディーゲームになると必ず収益とか規制など考慮して、なにかしら制約を受けながらゲームを作っているものだ。その点、小規模製作ならある程度は融通が利く。
特に昨今は性的表現やゴア表現に厳しい時代。これらを無視しろって話ではなく、企業が関わるとこういったリスクにはマージンを取る傾向にあるから、自由に作れる強みは必ずあると思う。

人に知られていないゲームに必要な要素ってなんだろうか。
内容の濃いストーリー? 魅力的なキャラクター? 奇抜なゲームシステム? 結局これらは遊んでもらわないと味わえない。となると、第一印象ってのはやっぱり大事なもので一目でわかるグラフィックとか一言で興味を惹かせるキャッチコピーは必要だと思っている。
ただキレイな映像ってことじゃなく「何か普通じゃないぞ」「他の要素のことも知ってみたい」と興味を持たせることで、ゲームが溢れている現代では一目で興味を持たせなければすぐに別のゲームに目移りしてしまうものだ。

個人的にここ最近でそれを感じたものでいえば『天穂のサクナヒメ』と『NEEDY GIRL OVERDOSE』なんかは発表された映像を一目見たとき「遊んでみたい!」と興味を惹かれた。
天穂のサクナヒメはその雰囲気あるグラフィックと「米は力だ!」という一言で印象に残るワードの強さがあった。NEEDY GIRL OVERDOSEは短いPVから伝わってきた狂気性と主人公が配信者という近年のコンテンツなのに2Dグラフィックというギャップに魅力があった。

天穂のサクナヒメ

クオリティの高いゲームはもちろん遊びたいけど、たまに大手が絶対に作らないような開発者の趣味全開で変態的(性的な意味じゃなく)なゲームが遊びたくなることがある。
自由という強みを生かしてこれまで体感したことのないものをフリーゲームならさせてくれると期待したいな。

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