まえがき
『NEEDY GIRL OVERDOSE』開発者による新作ノベルゲーム『妹、他者、パラノイア』をプレイしたのでレビュー。
ネット文化やSNS上に現れる人間像を独特の角度から描く作風は健在で、本作もまた『承認欲求』や『自己欺瞞』といったテーマを鋭く突いてくる。万人向けとは言い難いけど、良い意味で狂気を孕んだキャラクター描写が光る作品だった。
レビュー(ネタバレなし)
ゲームとしては、テキストを読み進めながらたまに選択肢(のようなもの)を選ぶオーソドックスなノベルゲーム。
とあるポイントで5つのストーリーから1つを選び、それぞれの登場人物とのストーリーを進めていくことになるけれど、分岐ではなく最終的には全員の話を読むことになるため、実際は一本道のストーリーといえる。

主人公は妹を溺愛する大学生。
人の感情や心理に敏感で、仕草や言動から『相手が何を考えているか』思考を読み取れる。この特技で嫌な相手のコンプレックスを突いて自殺したくなるくらいの精神ダメージを与えることができる。

この特技を持つせいか、あるいは環境のせいか。人嫌い(妹以外)になっている主人公は他人を恐れ、見下し、嘲笑していく。
登場人物たちは、ネット・SNS上で「そういう奴いるいる」と思わせるようなキャラクターたちで、思考を読み取れる主人公と関わってどんな結末を迎えるのか。プレイヤーは見届けることになる。
主人公が溺愛する妹:沙華。

たしかに主人公にとって重要な存在ではあるけど、一応の注意点としては妹とイチャイチャしたり、可愛い妹を愛でることを重点にしたゲームではない。ないことはないし、話の区切りで妹と会話するパートはあるものの、兄の主人公が関係を持つ人物たちとのストーリーがメインになっている。
あと、いくつか注意点を挙げておくと。
・セーブなどのメニューはウィンドウの上側にカーソルを持っていけば出てくる。
・オートセーブなし。
・Tabキーでスキップするが、デフォルト設定が未読スキップ可。
・流血や暴力など過激な表現が一部ある。
・自分自身の薄っぺらい部分を小突かれた気分になる。
クリア後の感想(ネタバレあり)
※ストーリーのネタバレを含みます。既クリア推奨。
蓮也はたしかに人の感情や心理に敏感で、思考を読み取る能力はそれなりにあるのだろうけど、正確には多感で自分自身と重なる部分があるから、自分を通して他人のことを理解したつもりになっているのだと解釈した。
つまり散々他人を見下してきたけれど、結局あれは自分に向かって言っているともいえる。わかりやすいのは冷川先輩の件で、言い訳してないで本を書けよって話が蓮也自身に真っすぐ返ってきているのは最高に皮肉めいてると感じた。
劣等感や自己欺瞞の裏返しで外野から石を投げたり、大言壮語を吐く痛々しい人間像はネット・SNS上で「そういう奴いるいる」と思わせるけど、そんな存在が不明確な相手を理解したつもりになって嘲笑して良い気分になろうってのも「そういう奴もいるいる」で、これまた皮肉られてる。
本作単体でプレイしてたら、ネット・SNSに対して随分と捻くれた意見をしているシナリオだなと感じるところだけど、現代ネットの闇を描いた『NEEDY GIRL OVERDOSE』の開発者というフィルターは、このテーマに説得力を与えてくれたと思う。
個人的な好みのルートはドクダミで、普通に犯罪はしてるけど、あの中では一番まともに見えたというか、しっかり自分の考えを持ってて好感が持てた。蓮也もドクダミを自死に追い込むような詰め方をしなかったし、救う選択をして謎のハッピーエンドを迎える分岐が個別にあるのが、蓮也自身も嫌がってなかったんじゃないかと思えた。
沙華については、プレイ開始前の想像よりずっと存在が薄く感じてしまった。
ストア概要にある【いもうと以外、ぜんいん死ね。】のキャッチコピー(?)は強烈で、オープニングの友人を飛び降りさせた所までは想像と期待に近いものだった。
ただそこがピークで、ギフテッドや不登校の設定はあってもなくてもってちょっと思ったし、そうなんだろうけど「自殺していないだけの二人」って納得するほどの共依存っぷりを自分は感じられなかった。
最後に、(タイトル画面からいける)エンディングは意外と真っすぐ綺麗に締めてたように思う。
そこまでの捻くれて皮肉ったストーリーと『NEEDY GIRL OVERDOSE』のフィルターもあったから、きっとダークで後味の悪い結末を迎えるのだろうと思ってた。ギャップの凄さに別のエンディングがあるんじゃないかと疑ったほどだ。
冷静に途中で起こってたことを考えてみたら綺麗なんて感想にはならないんだけど、このゲームに感覚を狂わされてしまっているのかもしれない。
今日はもう、人の悪意に触れるようなものを見ずに眠りたいと思う。


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