アクアリウムは踊らない:レビュー&クリア後感想

RPGツクール製の無料ホラーアドベンチャー”アクアリウムは踊らない“をプレイしたのでレビューとクリア後感想を書いてみる。
前半はネタバレなしのレビュー、後半は注記後にネタバレありのクリア後感想。

レビュー:ネタバレなし

ゲームメディアとSNSで見かけて知ったものの、RPGツクール製のフリーゲームは一時期散々遊んだからよほど真新しさを感じないとプレイするまでには至らないのがほとんどで、アクアリウムは踊らないを見かけたときも『Ibっぽいゲームかなぁ』というのが第一印象で、プレイまではしないだろうなと思いつつもPVを見たら惹かれるものがあったからやることにした。

アクアリウムは踊らない

不思議な空間に迷い込んだ主人公がはぐれた親友を探して脱出を目指すという設定に真新しさは感じなかったけど、水族館が舞台であり恐怖の対象となる異形の存在も水族館らしい水棲生物と一貫しているのがまずよかった。
製作者がIbを意識しているのかはわからないけれど、美術館の舞台を一貫していたIbのリスペクトを感じて久しぶりにこういうのやりたいを満たしてくれると思った。
実際プレイしてみたら水族館の舞台を生かした謎解き、物語に関わるものから関わらないものまで魚に関する情報が盛りだくさんで、ちゃんと水族館であることに意味がある作り込みを感じられた。

あと個人的にホラー要素のあるゲームや映画は一緒にリアクションをとって気持ちを共有できる誰かがいないとあんまりする気分にならないんだけども、PVに登場しているカフェや異形とコミュニケーションをしている場面などを見て、ホラー要素をただ詰め込んだゲームじゃなくアドベンチャー要素もしっかりありそうだと思ってやる気になれた。

デメキンカフェ&バー

ホラー要素はあるとこないとこで緩急があり、ずっと緊張しっぱなしにならないから休憩しながら進められる。それでも気を抜いているところを狙われるかもしれないという緊張感があって油断ならない。
急に大きな音を出したり、画面に異常なエフェクトを出したりするびっくり系は全然ないわけじゃないけど、特別多いとも感じなくてこれくらいはねって思う程度。

謎解きはしっかり作られてて、与えられた情報を記憶することに自信がなかったらメモが必要なレベル。知識はほんのちょっといるかもしれないけど、ほぼゲーム内の情報だけでやれるし詰まったら公式サイトにヒントがある。あとモノによっては総当たりで出来ないこともない。
ボクはとある場所の暗号解読に詰まってヒントを頼り「うーん、まぁそう見えなくもないか……」くらいに感じる場面があったけど、謎解き要素のあるゲームで誰もが全部スッキリ納得できることってそうないと思うからこういうのは遠慮なく頼っていいだろう。

時間制限と操作性を求められるところは少しだけ。ゲームオーバーになる場面は随所であるけどセーブポイントも小まめにあって、オートセーブと任意セーブ19枠もあるから巻き戻ってやり直しってことが起こらないのは親切だ。
ただ、エンディングに関わる取り返しのつかない要素が後半にあるから、後半だけはセーブを分けて残しておいた方がいいだろう。気になるなら公式のヒントにある【エンディング分岐について】を見るといい。

ストーリーとキャラクターについてはクリア後感想の方でするけど、グッドエンディングのすっきり具合はとても心地よいとだけ書いておこう。

クリア後感想:ネタバレあり

※以下、ストーリーのネタバレを含みます。

この手のホラーゲームは主人公が喋らず個性がないものが多い印象だけども、アクアリウムは踊らないのスーズは喋るし、感情はよく表に出すし、なんならこの恐怖の水族館の中心ともいえる重要人物だ。
文字化けだらけの世界でたまに普通に読める情報があってそれが重要なものであることは察しがつくけど、それでもレトロとクリスの正体、スーズとの関係が明らかになるところは衝撃を受けるに十分だった。

アクアリウムは踊らない

キャラクターの個性は十分だけども、ルルとキティだけはもうちょっと深掘りしてほしかったように思う。ルルの操作パートは短く結局はぐれてから水族館の中でスーズと(意識があるときに)再会することはなかったし、ルルと関わることで心境の変化があったキティも特定のエンディングまで出番なしだったのはもったいないと感じた。

謎解きについてはモヤっとするところがないでもないけど、結局自力で解けたかどうか人によるところがあるし、謎解きパートで時間制限に追われたり即ゲームオーバーになったりもしないからストレスはなかったかな。公式ヒントもあるしね。
でもマウス操作で勝手に落とし穴に落ちることが数回あってそれだけ勘弁だった。このゲームは絶対にキーボードかパッドでプレイした方がいいね。

これまた勝手な印象だけど、ホラーゲームやホラー映画のラストって勢いで締めくくって不思議空間や異形の正体とか曖昧なままが多い。そこを理屈で長ったらしく説明しだすと冷めることもあるから難しい塩梅ではあるが、アクアリウムは踊らないについては多くは語りすぎず不思議水族館の発生原因とそれを破壊する方法がちゃんと設定付けされて、このゲームのゴールが明確になっているのはうまいと思った。
おかげでグッドエンディングはすっきり気持ちよく迎えることができた。

RPGツクール製フリーゲームが流行った頃と違って、本格的なゲームエンジンで作られたゲームがたくさん無料で遊べる現代に、古き良きフリーゲーム系譜の作品が遊べてよかった。しばらく離れてたけどフリーゲームまた漁ってみようかな。

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